初めての方にお勧めの英語本5選の解説B-05

Monday, 30th November 2020   

 

お勧めの英語本解説04/05

  1. “Orpheus and Eurydice” retold by Hugh Lupton & Daniel Morden

その他の神話同様、やはり色々なバージョンがあるようですが、Hugh Lupton氏のものは、全くの悲劇ではないように思えます。

 

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あらすじ

Chapter 1:結婚式とお葬式

竪琴を弾かせたら右に出る者はいないというくらい、音楽に秀でたOrpheus。彼が竪琴を奏でると、動物達も集ってうっとりと聞き入るばかりでなく、木々さえも踊り出すほど。

 

そんなOrpheusが、Eurydiceと恋に落ちて結婚します。ところが、結婚式の最中に不吉な兆候が表れます。蠟燭やランプがどす黒い煙を出して、結婚式の招待客や神父を苦しめます。

 

翌日、夜明け前に目覚めたEurydiceは、ぐっすり眠っているOrpheusを残して、外に出ます。なんとEurydiceは裸足で毒蛇を踏みつけてしまい、咬まれて息絶えてしまいます。探しに来たOrpheusが見つけた時、Eurydiceは既に冷たくなってしまっていました...。

 

翌日がEurydiceのお葬式。結婚式に招かれていた招待客達が、そのまま参列者になってしまいました。葬式を済ませると、Eurydiceの目にコインが乗せられ、深い悲しみに打ちひしがれたOrpheusが見守る中、船で死者の国に送られていきます。

 

Lyre(竪琴)[lʌɪə]

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Chapter 2: 旅立ち

Eurydiceのお葬式が終わると、Orpheusは竪琴を片手に旅に出ます。何日も歩いて暗い洞窟に着くと、中に入ってどんどん奥へ奥へと進みます。血の川と涙の川を、ジャブジャブと進み、死体からの腐敗臭が漂う果樹園を越え、刀とナイフの森を抜けて行き、ようやく忘却の川に到着します。

 

黒々と濁るその川が死者と正者を分かつ川なのです。死者の魂が一旦この川を渡ってしまうと、生きていた時の記憶は全て失われます。Orpheusが目指していたのは、その奥にある死者の国です。『私の美しい花嫁が、どうしてあのようなところにいようか?』と、Orpheusは竪琴を弾き始めます。

 

竪琴の美しい音色が、渡し舟の船頭の耳に届きます。『見知らぬ者よ、そなたの奏でる音楽にすっかり魅了されました。そなたが死者であろうが生者であろうが、どこにでもお望みのところにお連れしましょう。さぁ、乗りなさい』。目的地に着いて、渡し舟から降りると、突然唸り声が。三つ頭を持つ猛犬Cerberusが吠え始め、黄色い歯を剝きだして今にも飛び掛かろうとします。

 

しかし、Orpheusが竪琴を弾き始めると、猛犬Cerberusはしっぽを振り、心地よさそうに目を閉じてしまいます。死者達さえも、その美しい音色に誘われて集まり始め、涙する者もいれば、忘れていた楽しみを取り戻して笑い出す者もいます。

 

Chapter 3: Hade王の悲しみ

死者の魂にとり囲まれながらも、Orpheusはどんどん先に進みます。と、突然黒壁の宮殿が現れ、さらに進むうち、死者達の気配を感じなくなります。宮殿の王に会うため、黒い門を抜け、黒い階段を上がり、黒い扉が開くと、Orpheusは中へ入ります。

 

Orpheus は竪琴を奏でながら、Hade王と御后のPersephoneに捧げて、愛する者を失った、生きる者の悲しみを歌にします。暫しの沈黙の後、御后は銀色の涙を流します。Hade王は、一粒の暗黒の涙を落とすと、生者の命運を担う3人の下部を呼びつけ、切れてしまったEurydiceの命の糸を修繕するよう命じます。

 

下部が立ち去ると、Hade王はOrpheusに向かって、『行くがよい。Eurydiceはお前の後をついてゆくであろう。ただし、人間界に戻って夜が明け、完全に明るい日差しに照らされるまで、決して振り返ってはならない』と、Orpheusに、Eurydiceを連れ戻すチャンスを与えます。

 

Chapter 4: 帰途

深くお辞儀をして、Orpheusは宮殿を後にします。川に着くと、待ち受けていた船頭のCharonの渡し舟に飛び乗ります。腰を下ろすと、すぐに誰かが船に乗った気配がしました。岸に着いて渡し舟を降りた時も、足音がしました。森を抜け、果樹園を抜け、2つの川を渡った時も、人の気配を感じました。ようやく洞窟を抜け、新鮮な空気が感じられ、星空を見上げたOrpheusは、『もう少しだ。あと少しで夜が明ける』と自分自身に言い聞かせます。するとその時、背後で躓いて転ぶ気配がします。Eurydiceが落ちてしまわないようにと、振り向いて手を伸ばした瞬間、一瞬だけEurydiceの青ざめた顔が見えたのですが、命運の下部はまたEurydiceの命の糸を切ってしまいました...。

 

Orpheusは大慌てで、Eurydiceの名を呼び名がら、もと来た道を戻り始めます。忘却の川の川岸で立ち止まると、猛犬は唸り始め、船頭Charonは口汚くOrpheusをののしり、船を出すことを拒みます。もう二度とHade王のところに行くことはできないと悟ったOrpheusは、人間界に戻り、音楽の神Apolloを敬愛し、ひたすら音楽に専心します。悲しみに彩られたOrpheusの音楽は、以前にも増して美しく、多くの女性達が恋に落ちますが、Orpheusはそれに気づくことすらありません。

 

Chapter 5: 神の怒り

Orpheusの美しい音楽は、酒の神Dionysusの耳にも届きます。『Orpheusはなぜ、Apolloにばかり音楽を捧げて、俺には何も捧げないのだ!?』と嫉妬に怒り狂ったDionysusは、下界を見下ろします。その感情に突き動かされた女性達は、自分達も見向きもされなかったという嫉妬と、Dionysusから受けた怒りで、Orpheusを襲います。石や農具でOrpheusを襲って殺し、鎌で首を切り取ってしまい、竪琴とともに川に投げ入れます。Orpheusの頭も竪琴も、しばらくはまるでリンゴの様に川を流れていたのですが、不思議なことが起こります。川に浮かんでいるOrpheusの頭が、口を開けて歌を歌い始め、竪琴は誰にも弾かれることなく、音楽を奏で始めました。世界中が息をのむほど美しい音楽です。

 

Chapter 6: 永遠に

Orpheusの頭と竪琴は、川から海に流れ込みます。波に運ばれて、Lesbos島の砂浜に打ち上げられますが、まだ音楽を奏でています。音楽に魅了された島民が、Orpheusの頭を洞窟に運び込みます。音楽の神Apolloが竪琴を拾い上げ、夜空に配置させたのが、今日の琴座になったと言われています。

 

そして、Orpheusにとって三度目の旅となる忘却の川に、今度は自身も魂となって向かいます。岸で待っている船頭のCharonのことも思い出せません。Orpheusに気付き、哀れに思った御后のPersephoneは、指先で軽くOrpheusとEurydiceの額に触れます。すると、2人の記憶が戻ります。人間界ではない、薄暗い世界ではありますが、再会できた2人はずっとともに暮らしているそうです。今ではEurydice が後ろを歩くことがあっても、Orpheusは安心して振り返ることができます。

 

あとがき

途中、かなりグロテスクな描写もありますが、そこそこのハッピーエンディングではなかったでしょうか?御后のPersephoneのおでこタッチがないと、それはそれは悲劇的ですが、たとえ生きていなくても、再会できて良かった!と思ったのは自分一人でしょうか?

 

今回のお勧め図書には、こちらの動画が一番近いようです。

The Story of Orpheus and Eurydice - A Tale of Love | Greek Mythology Explained - YouTube

www.youtube.com

 

こちらは血みどろシーンのない動画。

The Myth of Orpheus and Eurydice - The Story Teller | Ancient Greek Gods Cartoon - YouTube

www.youtube.com

 

次回予告

今年最後のお勧め図書“The 14th Dalai Lama (a Manga Biography)”の解説は、来月の月末になります。先日図書館に行ってみると、電子書籍化されていました。本はやはり紙で読みたいものですが、今から注文しても一ヶ月以内に届くかどうか…。

 

ではまた来月。