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Tuesday, 27th April 2021 

お勧めの英語本解説03/05

3.“The Eye of the Viking God” by Terry Deary

 同著者によるヴァイキングシリーズの中で、特に人気が高かったのが本書です。10代の生徒さん達の間で、Jeremy Strong氏の”Laugh Your Socks off”シリーズに次いで、よく読まれていました。薄くて手ごろな分量ですし、あまり文法にこだわり過ぎず、ストーリーを追うことを重視すれば、大人の方でも十分楽しめると思います。

 

目次

第一章 Fleece (主人公の名前)

第二章 (ヴァイキングの神)Odinの目

第三章 旅人

第四章 事件

第五章 神への奉仕

第六章 逃亡

第七章 ボート

第八章 帰郷

 

用語解説 

  1. Odin

北欧神話の神々中の主神で、戦いの神とされています。魔術に長け、知識に対する探求心が高く、知識を得るために、自らの目を代償に差し出す事さえあったと言われています。帽子を深くかぶり、マントをまとった、ヒゲ面の片目の老人として描かれることが多いようです。

 

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  1. Icy Hall of Hel

死後Valhallaに行くことのできなかった者達が行く黄泉の国のような場所。勇敢に戦った果てに亡くなった英雄達が迎えられるValhallaとは別世界の、荒涼とした所のようです。

 

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  1. Valhalla

勇敢に戦って戦死した、誇り高きヴァイキング達のみが行ける場所で、ここでは死ぬことなく毎日戦いに明け暮れることができるとされています。(ヴァイキング達にとっては、それはこの上もなく名誉なことなので。)

 

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概要

第一章 Fleece

793年のノルウェイにて。その女の子はヴァイキングに誘拐され、奴隷として働かされていました。幼い頃は残飯を与えられ、家畜の世話をさせられていましたが、大きくなると家を出され、丘で羊やヤギの世話する生活を強いられました。年老いて死んだ羊の皮をはいで、寒さを凌ぐためのコートを作ったことから、”Fleece”と呼ばれるようになりました。

 

第二章 Odinの目

ヴァイキングの晩餐会を控え、FleeceはSigurdから準備や支給をするように命じられます。SigurdはFleeceが仕えている家の、同い年位の少年で、Fleeceが少しでも遅かったり”Master”を言い忘れたりしたら、蹴とばしたり、鞭で打ったりします。

 

晩餐会が始まり、余興の物語の時間になりました。詩人がヴァイキング神話を語る時は、誰もが飲食を止めて話に聞き入ります。リクエストに応えて”Odin”の話が始まります。『青いマントに身を包み、旅人のいで立ちのOdin*1。巨人が守る井戸から奇跡の酒を飲むには、片目を捧げなければならない…』。

 

第三章 旅人

晩餐会の翌朝。ご馳走をたらふく食べ、大量の酒を飲んで、そのまま眠りについたヴァイキング達は、まだ眠ったままですが、Fleeceは早くから働き始めます。と、橋を渡ったところで、男が座って火を起こそうとしています。『お早う。早くから忙しいね』。その旅人のアクセントから、この土地の者ではないことが分かります。『薪を集めているんです。昨日晩餐会があったので、まだみんな眠っていて…』。すると『ナッツや野イチゴなどでしのいできたんだが、2日間何も食べていないんだ…。何か食べる物をくれないかな?』と旅人。『私、奴隷なんです。』旅人は漁をしていて、英国から流れ着いてしまったと言います。『うまくボートを盗むことができたら、家に帰れるんだがなぁ。』と言う旅人に、Fleeceが『私も一緒に連れて行ってもらえませんか?』と頼みます。そして2人の脱出作戦が始まります。

 

第四章 事件

もうすぐ故郷に帰れる!重い薪を乗せたソリを引いていても、丘を駆け下りるFleeceの足取りは軽く…。と、橋を渡っている時、何者かが川の中に倒れているのを見つけ、急いで助け出そうとしますが、重すぎて動かせません。剣の模様から、その男がAskoldだと分かります。Fleeceは大急ぎで、助けを求めて走り出します。

 

集まってきてAskoldを岸に上げたヴァイキング達は、口々に『哀れな奴だ』『死ぬのなら、戦場で死ぬべきだった。』『酔っ払って溺死するなんて、Icy Halls of Hel*2 行きに違いない…。良い所には行けないぞ。』と言っています。(この時代は、戦で死ぬことが美徳だったので。)すると突然、ドアのところから『そんなことはないぞ』と声がします。『Rusで行われている、死者を弔う特別な方法がある』と、何者かが現れます。

 

第五章 神への奉仕

村人たちは、突然現れた詩人の周りに集まると、詩人は『Rusの国では、村長をValhalla*3に送るための、特別な葬儀が行われている』と語り始めます。『ValhallaにはOdinが住んでいて…』と言えば、村人達が『魔術に長けた戦いの神だ!』『そして、そこではヴァイキング達が、人喰いや大蛇や巨人と、毎日戦っているんだ!(=これがヴァイキングの理想の死後)』と続けます。『AskoldをValhallaに送るには、剣を守る未婚の娘が必要だ。Askoldを船に乗せ、武器と食料を積み込んで…』詩人が指示を続けます。指示を聞いた村人達は、話し合いを始めFleeceを差し出すことに同意しました。が、先ほどまでそこにいたFleeceが、どこにも見当たりません!

 

第六章 逃亡

ヴァイキング達の計画を聞いたFleeceは、一目散に逃げ出します。とにかくどこかに身を隠し、約束の時間に約束の場所で、あの旅人に会わなくてはなりません。誰にも見つからないで小屋にたどり着ける様、遠回りして谷間から進みますが、運悪く、Fleeceを待っていた羊達が、彼女を見つけて集まってきてしました。着ていたフリースを脱ぎ、裏返しに着て、羊の群れの中に飛び込み、なんとかその場をやり過ごせたものの、小屋ではSigurdが彼女を待っていました…。

 

第七章 ボート

捕まえられてしまったFleeceはSigurdに連れられて、村に連れ戻されます。もう逃げ出すことはできません。『可笑しなことがあるもんだ』と道すがら、Sigurdが話し始めます。Sigurdによれば、Sigurdの父親が英国を襲撃した時、FleeceをかばおうとしたFleeceの父親の片目を、剣で突いて負傷させ、Fleeceを奴隷として連れ帰ったのだそうです。Sigurdの父親は負傷したFleeceの父親を、今のFleeceと同様、船であの世に送り出したというのです。村に戻ると、船の準備は既に整っており、後はFleeceを乗せるだけでした。と、そこにあの旅人が現れます。『あの人も殺されてしまう!』Fleeceが思った瞬間、旅人は『ごきげんよう』と村人に向かって挨拶をします。つばの広い帽子を被り、青色のマントをまとったその姿は、まるでOdinそのものです。『貴方はどなたですか?』の問いに『私はOdinだ』と答えますが、その訛りから『Odinが英国人?』という声が上がりましたが、旅人はすかさず帽子を持ちあげ、『いかにも。御覧の通り、私は片目だ』と、本当に片目の顔を見せます。)村人達は即座にその場にひれ伏し、旅人の指示に従って、旅人とともにFleeceを船に乗せ、船を出します。『あの男、なんだか見覚えがあるんだが、どこで見たのか思い出せないんだ…』と言うSigurdの父親ですが、『まぁ、多分夢の中でだろうよ』と。

 

第八章 帰郷

その頃船上では、Fleeceが旅人から今までのいきさつを聞いています。『木枠が腐りかけた個所もあるが、船も食料も、この航海には十分だ』と言う旅人。『英国に着いたら、私はあなたの奴隷になるのですか?』と尋ねるFleeceに、『とんでもない』!ここで物語はクライマックスを迎え、驚きの結末を迎えます。来星間もない中学生の生徒さんから『いくら物語とは言え、ドラマチックすぎますね』というコメントがありました。ここまで読んで下さった方は、凡そ見当が付くのではないでしょうか?エンディングが気になる方は、是非この本を読んでみて下さいね!

 

あとがき

それほど難しい単語は出てきていないように思います。前回の『初めての方にお勧め』に加えるべきかどうか、ずいぶん迷ったのですが、厳密にレベル分けをしている訳でもありませんし、今まで読んだ方からのフィードバックなどからすれば、次の段階で、という感じでしたので、『次の本をお探しの方』の方に振り分けました。いつもこんな感じですが、これから先もきっとこんな感じです…。ご理解いただけますと幸いです。

 

この本を一緒に読みたいとご希望の方がいらっしゃいましたら、ご一報ください。人数がそろえば、読書会も再開できます(オンラインですが。)卒業生さんでしたら、お一人でもご一緒致します。それ以外の方は、その都度ご相談させて下さいませ。

 

次回予告

来月末は、次のお勧め図書“Becky’s Terrible Term”の解説です。“My Naughty Little Puppy”の著者Holly Webbさんの別シリーズです。主人公の年齢とともに、内容の難易度も若干上がっています。

 

ではまた来月末。